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    2022年 ベトナム最新事情 ~ アフター・コロナの留学事情面から ~ 

    2022年7月
    ベトナム教育局認可校・すばるアカデミー
    GM 藤澤 謹志

     約二年ぶりに、ベトナム・ホーチミン市に戻った。拙稿は、帰国後、現地を回ってみて集めた声や知った最新の現地状況から考えたことなどを基に書かせて頂いたものである。ご高覧頂き、何か一つでも貴校のコロナ後の事業展開での指針のご参考や一助となれば幸いである。
    この二年間は、本当に苦しいものだった。当初は、対面授業ができず、やむなくオンラインという不慣れな対応を取らざるを得なかった。そのため、学生達には、本当に負担をかけてしまった。オンライン授業専用の日本語教材など殆どなく、まさに「次回の授業にも参加してくれよ」と願いつつ教え、試行錯誤と教材作成・準備を繰り返した期間だった。

     また、オンラインは、現地学生(特に地方在住)のWIFI環境やスマホの品質や停電、天候(大雨)などにも大きな影響を受け、学生のモチベーション維持が大変だった。そのため、N5・N4・N3くらいまでは何とかレベルを上げてもそれから上の能力を授けることは、経験とスキル不足を感じずにはいられなかった。結果、一部のN3やEJU・N2などを目指していた学生達の多くには、二年近くも足踏みをさせてしまったことに忸怩たる思いが残る。更に、その期間中に家族や本人が罹患したり、自粛による家業の収入減が起こったりして、COEが交付されているにもかかわらず、留学を諦めてしまった学生達が本校だけでも10数名にも及ぶ。ベトナムでは、国による緊急救済給付金もない上に、徹底した管理・自粛断行に踏み切った2年間をただひたすら耐えるしかなかったのだ。そして、日本の「G7で最も厳格な水際対策」の掛け声の下、いつ来られるのかも分からず1年~2年もの間、自宅待機させられ続けた学生達が本格的に来られるようになったのは、ようやく今年の4月になってからだった。
    学生が一人、二人と来る毎に羽田空港に出迎え、顔を合わせて声を交わしたと思ったら、隔離先の宿泊所に向かうバスに手を振った。数日後、隔離期間が終われば、ある者はホテルに迎え、またある者は空港に迎えるということを約一か月間、延々と繰り返した。

     ある時には、空港で待機中、オンライン授業を行っている最中に学生が入国してきて、あわてて出迎えたこともあった。
    そういったことへの手間とか大変とかの思いより「よく来てくれた。よく長い間、耐えてくれた」という感謝の気持ちしかなかった。今回のコロナ禍においては、悩み苦しむことが殆どだったが、「一人一人の教え子を我が子と思い、初めて渡日した空港に親として迎えてあげる」という20年前の“初心”を思い出させてくれた機会でもあった。

     ただ、来年、再来年のための学生募集は、待ってくれない。そのため、今春、ベトナム入国が再開した時点で、急ぎベトナムに戻った。約二年間もの間、募集活動が停止していたことなど過去になく、20年近く継続してきた留学の流れが途切れる危機感が強くあったためだ。
    当たり前のことだが、よほどの名門校・伝統校でもない限り、募集活動をしないと学生(特に良い学生)は、来てくれないし、集められない。よって募集活動は、留学事業の根幹(基盤)を成す部分であり、良い学生に巡り合うためには、どうしても対面で、できれば、ご両親にも会わねばならない。場合によっては、その子の自宅まで訪れ、家庭環境・経済状況なども知っておくに越したことはない。そのため、実際に片道4~5時間かけても現地校(本校の場合は、教育局認可校同士の協力校である高校や専門学校など)に赴かないと、現場の生の声を聞いたり、変化する状況を正確に把握したりできない。

      地方を回ると、まず耳にするのが「特定技能」への関心と不安だ。現地では、技能実習関係機関が激しい人材獲得合戦を繰り広げて来たが、今は明らかに、評判に陰りが隠せない技能実習から特定技能へとセールストークが移っているということだ。そういうことは、十分予想されたことではあるが、今回の場合「期待感」以上に「不安視する声」が目立つのが特徴だ。通常、ベトナム人は、日本人と違いマイナス面をあまり見ない傾向がある。それが、どうしても懸念が消えないという感じなのだ。そういった声のなかで多いものを挙げると「制度が新しく変わっても、受け入れる会社や組合は変わらないし、そもそも日本側の罰則は緩く甘いので、給料不払いや不当解雇などの法令違反数の多さも変わらないのではないか」とか「いくら転職可能と言っても、言葉もできない外国人がより良い勤め先を探し、応募し、転職するなど容易にできるはずがない」とか「日本人雇用者にとっては、ベトナム人など所詮、途上国の外国人なので、嫌いになったり、何かの問題があったりすれば、強制的にでも帰国させればいいと軽く考えている考え方は、変わらないのではないか」などというものであった。そういう声を聞き、感じることは『(今まで絶対的な上の立場にいた)日本というブランド国がついに見切られつつあるのではないか』という思いだ。

      私がベトナムに渡った25年ほど前は、フェアーでは技能実習会社のブースに長い列ができていた。通訳として留学のブースにいて、それをうらやましく眺めていたものだ。それが15年、10年、5年と経て、志願者数の減少は、目も当てられないほどとなった。そして、ついに本来の「現地で技術移転をし、貢献するため」という建前を放棄し、元技能実習生すら「また来られるようになりました」と政策転換してしまった。これなら、初めの頃か20年ほど前から、真面目に働き、働く傍らコツコツ自習しN3を取得するなど頑張り屋で問題を起こさない実習生なら、そのまま日本にいてもよいとでもしていたなら、一体どれくらいの実習生が仕方なく戻らねばならなくなり、帰国後も矛盾を抱えずに済んだのかと思いたくなる。また、日本側がちゃんとルールや渡航前に決めた約束を守っていれば、どれだけの失踪者や日本への失望者などが生まれなかったのかも残念でならない。そして、「原則、移民は受け入れない」と言われた安倍政権時代に十分な議論などないまま「日本は実質的に移民政策に舵を切った」とされる。しかし、舵を切り、門を開いたにも関わらず、特定技能生が押し寄せる気配はないし、元技能実習生が喜び勇んで大勢日本に戻ろうとする例もあまり見られない。それは、現地を見ず、現地の声を聞かずして、自分の願望だけを押し付け、机上の論を空んじていた結果ではないかと考えざるを得ない。

     ASEAN諸国で際立つベトナム民族の大きな特徴は、越僑の存在だ。USAだけでも200万人近いので、恐らく世界全土では、700万人くらいはいると思う。ベトナムの全人口が8000万人とすれば、ほぼ10人に一人が海外に暮らす世界TOPレベルの(高度)移民供給国なのだ。そして、彼らが定住する国々は、USA、EU諸国、豪州、カナダなどの「先進移民諸国」だ。本国にいるベトナム人は、そういう主にG7諸国に暮らしている家族や親類や同胞の生の声や生きた情報をSNSなどから得る事ができる時代だ。そういう現地の状況を理解すれば「舵を切った」と盛り上がっているだけで、移民の生活や教育や子育てなどについての法律の審議すら行われていない日本は、国家の生き残りをかけて、他のG7諸国との国際人材獲得合戦に臨んでいるようには、どうしても見えない。

     帰国し、市内を歩くと、新たに目立ったのがフランス大使館の隣にフランス語センターとフランス留学機関の看板だ。USA大使館の広大な壁一面にも留学広告が掲げてある。英国も同様。そこに韓国や中国、台湾が続いている感じ。そういう宣伝はこれまであまりなかったことを考えると、そういった国々は、コロナ以降、ベトナム人留学生(移民)を積極的に歓迎するようになったことが分かる。中でも注目に値するのが韓国留学だ。ベトナム人青年達が留学に思いきれない隠れた最大の要因に“子離れのできない親”(一人っ子は特に)があるのだが、そこに『最初の二年間に限り、親も一緒に同居できる』と言う解決案を出した。結果、韓国への留学希望者が激増しているという。現地の声を訊いた上での素晴らしいアイデアだと感心した。これに対して、日本の受け入れ先の意識は、いかがだろうか? 概ねベトナム人の親がどれほど日本に渡った子を心配しているかなど想像もできないというより想像しようとすらしていないのではなかろうか。逆に「(日本で働く)子供に無心をしている親が少なくないのでは」と確証もない少数の話を全体の印象として思い込んでいる方もいるように思う。そういう親が全くいないとは言わないが、90%以上の親御さんは、「子供の将来のために」身を切る思いで、無い金を工面して送り出しているのがこれまで親御さん方々を見て来た実感としてある。子供が「送金できない」と言えば、無理強いする親などいないと思う。韓国ドラマの放送数も著作権での壁で進まない日本と異なり、洪水のように流されている。日本は、相変わらず、アニメ・ドラえもんやコナンに頼っている。韓国への親近感が日本への憧れを超えて来ている。そういう意味で、遺憾ながら、韓国には、一人当たり年収のみならず、留学生数すらも日本が追い抜かれる日は、そう遠くないように予想する。
    一方、日本総領事館は、以前通りで、外観からは募集への熱意など微塵も感じられない。これまで通り「日本へ来たい青年など、放っておいてもどんどんやって来るものだ」とでも構えているように見える。とにかく、世界規模で人材は、努力しないと獲得できないという競争の中にいるということが、なかなか日本は、意識を変えられないように感じるのがもどかしい。

    コロナ禍でもベトナムの経済成長は止まらなかった。先進諸国のような大規模な金融緩和政策をとらずとも、ベトナムには、コロナによる向かい風を押し返すだけの成長力があったということなのだろう。ベトナム民族は、経済的に余裕ができ、家族の生活が安定すると、エネルギーを子供への投資に向けて来る。派手なことは、あまり好まない。基本的に質素倹約の民族だと思う。そこに、もともと備わっている英語力を初めとして、フランス語や中国語などの語学力修得能力の高さが加わる。更に、世界に広がる越僑達のネットワークが情報としてつながり「どの国に留学すれば、自分が安心と誇りを持って暮らせ、将来にわたりその国で活躍できるのか」を慎重に見極めている。その視線の先に「日本」と言う選択肢が残っていてほしいと願わずにはいられない。

    市街の光景では、他に目立つものが主に外国人観光客向けに営業していたSHOPやレストランやブティックなどが閉まり、新たな借主を求める不動産屋の張り紙がべたべたと貼られてあることだ。“日本人街”であるレタントン通りもコロナの嵐が過ぎ去った跡が散見された。時々行っていた日本料理店もなくなっていた。良いか悪いかは別にして、事業持続継続のための給付金があり、中にはコロナ前よりも改装されきれいになった店もあった日本とは違った光景がそこにはあった。

    最後に留学面については、これまでのように「バイトで稼げるから」などと言う収入面でのセールストークがメインでは、地方でも徐々に集められなくなっていくだろう。その傾向は、ベトナムの経済的上昇と日本の停滞下降傾向による経済格差の縮小に伴い、今後、益々顕著になっていくのは間違いない。

    以前は、金があるから世界から人々が集まって来た。しかし、それがなくなれば、だれも来なくなった・・・留学がそれで良いわけがないのだ。

    二年半にも及ぶ、未曾有のコロナ禍を乗り越えたこの機会に、心機一転、留学の本来のあり方である『将来の自己投資として何か専門を身につけるために日本に留学に来てもらう』という姿に徐々にでも回帰し、新たな留学ルートを切り拓くべきチャンスではなかろうか。
    UberタクシーやAirbnbの参入阻止で示されるように、国民の利便より既得権が守られ、時代の変化を受け入れず、むしろ避けているようにしか見えない日本と異なり、成長過程真っただ中のベトナムの変化は速くて激しい。過去の中国や韓国と同様にベトナム人青年達が「留学資金ができたから、欧米に留学します」となってしまえば、その時は、もう手遅れなのだ。そして、そういう本来の姿で募集や教育を行うということは、圧倒的なシェアを占める英語圏留学との共存を目指すこととなる。欧米圏留学と競うなど、20年前なら可能性はあっただろうが、今となっては無理だとしか言えない。
    ベトナムは、ASEAN諸国の中では、最も移民数も留学者数も抜き出ている。そのベトナム青年達が海外に向かうパイの一割でも来てもらえれる流れを構築できれば、日本の学校にとっても経営上の大きな柱の一つとなり続けるだろうし、資金面での余裕がある子達は、元々英語も得意なので、USAや欧米圏同様、進学実績面でも貢献してくれるようになるはずだ。

    そして、日本を選んでくれた青年達に対して、現状のように、言葉も習得させずの使い捨て(期間限定の単純労働)や教えっぱなしなどの“消費型”ではなく、落ちこぼれを作らず、しっかり育て上げた上で、日本で活躍してもらう高度人材予備軍になってもらう“養成型”に改めないといけない。それが留学の「王道」であることは、不動の事実だ。
    それには、これまでの現地任せの募集・教育を抜本的に改善し、送り出し側と受け入れ側と本人や親御様が協力し、スクラムを組み、現地での準備体制(日本語レベルN3や学習習慣など)を整えることが不可欠だ。自分は、日本側が不断の努力を継続し、ベトナム人青年達を新たな日本の仲間として受け入れられるようになれるかどうかが次の百年間の日本の盛衰の試金石だと言う認識をしている。その最前線を担っているのが日本語学校である。まさに『(万人への)教育は新しい国家にとって百年の計』なのだ。

    ただ、そのチャンスは、ベトナムの成長ぶりを見る限り、この10年間が最後かもしれないと危機感を抱いている。世界に3か国しかない中韓台湾からの留学生獲得の大河の流れ構築に成功できなかった轍を“準漢字圏”とも言えるベトナムでも踏むということは、何としても避けなければならない。「第二、第三のベトナム」などないと腹を括るべきだと申し上げたい。

    ご存じのように、ホーチミン市の街を歩きながら、いつも感じるのがベトナムの活気だ。この都市は、歩くだけで元気が湧いてくる。コロナで閉めた店舗の多くは建物が壊され、新たに新築の建築工事の音がそこかしこに聞える。“Scrap & Build”。数か月後には、ピカピカの建物に新たな店が入り、賑やかさを更にパワーアップさせていることだろう。新たなエネルギーの流入が都市の循環を高め元気にしていく。そして、相も変わらぬ人々の表情の明るさと生活のたくましさ。このパワーと元気さを日本にもたらしたい。特にこれから本格的に超少子高齢化の嵐が襲う日本に。そして、USAや欧米圏同様、ベトナム青年達の成長を日本の成長の翼の一つとできたらと願ってやまない。

    尚、小生は、8月末まで現地で授業など活動をしております。ホーチミンにお越しの際は、是非お声がけ頂ければ幸いです。また、募集や調査活動などでお力になれることがあれば遠慮なくお申し付け頂ければ幸甚です。
    連絡先:学校法人 すばるアカデミー(現地名)Truong Nhat Ngu Ngoi Sao Xanh
    住所:41 Dang Dung st. Tan Dinh ward. 1 dist. Ho chi minh City Vietnam
    電話:090-808-2288 ( Ms.フーン)
    vietnambep@yahoo.co.jp  vietnambep2@gmail.com  twitter : @vietnambep
    一般社団法人 国際教育開発BEP社
    〒158‐0094 東京都世田谷区玉川3丁目35-34-310

     

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    掲載紙 :Tuoi Tre(トウイチェー)紙(予定) HP:https://tuoitre.vn/
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    会場は、本校。或いはホテルや提携高校など  *費用別途
    以上
    貴校のコロナ後の益々のご発展を祈念しております。どうぞよろしくお願いいたします。